『生まれたての恋をしよう!#0』







普通。



異性と付き合うには、まず相手に自分の気持ちを伝えて。そこでOKが出なくとも、なら、まずはお友達からだとか何だとか言って、それなりの順序を踏んで付き合うもんだろう。
世間一般の常識に照らし合わせてみるまでもなく、俺自身が生まれてこの方ずっと今の今まで、それが清く正しい恋愛の順序だって、信じて疑ってなかったしな、実際。
それなのに、なのに、なのに…………





いったい、これは何がどうなってどうなったらこうなって、だからして如何して今の状況に、だからして……!?!!!?!





俺のなけなしの脳みそが、灰色の脳細胞が、フル回転で稼動しているのが実感出来る。



――イヤ。マジで!



自分で言うのも悲しくなるくらいに、仕事で使ってる以上の働きを、俺の脳細胞は今しているぞ。絶対!



そっと隣を窺えば、カーテンの隙間から差し込む光が、その見事なまでに綺麗な黒髪に淡いコントラストを刻み込んでいる。
そして……チラリと布団の間から覗いた、目に眩しいくらいに白く木目細かな肌が、肌が……!!!!!





のあ゛ぁぁあ゛ぁあぁぁ〜〜〜!!!!!!!





瞬間、ぼっと、自分の顔が赤くなるのが解った。
今更、俺は小学生のガキかと、心の中で独りそんな己に毒づきながらも。
確かに……確かに、記憶は……ある。
未だ、はっきりとは思い出せてはいなくとも、あの……肌の感触は、確かにはっきりと覚えている。
俺は、じっと己の手を見つめると、次に隣を見つめた。
その間にも、俺の数少ない灰色の脳細胞が、よく思い出せと。そして、今の己が置かれている状況を立場をよく考えろ、と。煩く喚いている。



そうせっつかれなくても解ってら!
今一番。どうして今のような事態になってしまったのか、そして、この先如何すればいいんだと。考えねばならないのは俺自身なんだから。





思い出せ……思い出せ、俺。
如何してこうなってしまったのか、その経緯を。記憶を探れ!
未だ夢の世界の住人である隣の『彼女』が目を覚ます前に……!!!!








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