「……ならルキア。
 ……念願の家族が出来た感想は如何だよ?やっぱり、家族ってもんは良いもんなのか?朽木隊長は、お前に優しいのか?」
淀みを知らない水の流れの如く、俺の口から矢継ぎ早に出される質問。それはまるで、途切れでもしたら、その場で全てが終ってしまうかのようで。俺は、俺の緊張がルキアへ伝わらないようにと、それを誤魔化す為にも言葉を途切れさせる訳にはいかなかった。
「……ああ……。
 ――兄様は……良い人だよ。それに皆、こんな流魂街出の私にも、色々と世話をして下さるしな」
瞬間、詰まった風な様子を見せたルキアであったけれど、次には何事も無くスラリとそう応えた。
それは、可も無く不可も無い、実に見事な回答だった。



『良い人』。



実際に優しいかだなんて解らねえ。けど、俺の質問へ返すには、それでも十分な言葉であって、朽木の者に対するルキアの感想だって、実に上手く逃げられたもんだ。
ルキア、お前は確かに俺の問いに答えてくれたよ。
だけど、でも……それなら……。
「――なら、朽木家
(そこ)はお前にとって、優しい所、何だな?」
一言一言、確かめるようにして俺はそうルキアへと言葉を投げ掛けた。
周りの人間がどんな人物であろうと。お前の兄様がどんな人物だろうと、俺には知っちゃこっちゃねぇ。まぁ、お前にとって優しければ、どんな人物だって別に構わねぇんだけど。でも俺が知りたいのはただ一つ。



――そこがお前にとって、幸せになれる場所なのか?



それだけがただ、気掛かりなんだよ。
「……あ、ああ……。
 そのような事、勿論だとも!は、はは……!これは変な事を訊くな!」
最初は少しの引き攣りを残して。でも最後はからからと大声で笑い出したルキア。その笑いは、さながら空元気のようで、無理して笑っているようにしか、俺には見えなかった。









「……ルキア……」
「む?何だ?恋次?」
「……お前、嘘吐くのも大概にしろよ……」
低く、押し殺した声で、俺がそう言うと、
「な……っ!何を言っておるのだ!?」
びくりとルキアが、小さく反応した。
「お前、今……どんな顔して笑ってたか……自覚、無ぇだろ……」
「……っ!」
俺の言葉に、見事に声を失って硬直するルキア。けど、引き攣った笑みをその顔に張り付かせながらも、
「な……何を言うか……。私は、至って、普通だぞ?」
と、何時もの調子を無理に出そうとルキアが試みる。
だから、んなの俺には効かねぇんだよ。お前な、何年俺と共に過ごして来たと思ってんだ?
「ルキア……。他のヤツは誤魔化せたとしてもな、この俺まで騙せるとは思うなよ!?
 他のヤツには嘘だって吐いてもいい。けどな……けど俺にだけは……そうさ、俺にだけは!嘘を吐いてくれるなっ!!」
「……」
最後は我知らず大声になって。俺は、そう叫んでいた。



そうさ。ルキア。お前の嘘なんざ、全部お見通しなんだよ!
いったい、俺が何年お前を見続けて来たと思ってんだ!?それはもう、気の遠くなるような、笑いたくなるような年月を、俺はずっとお前だけを――ルキア。お前だけをずっとずっと、見て来たんだ。そんな俺が、お前の嘘を見抜けないとでも思ったか!?それなら俺も、随分と舐められたもんだよな。









「――ルキア。本当の所は、どうなんだよ?お前、本当は家でも……」
「……それ以上……それ以上、何も言ってくれるな。恋次……」
更に言い募ろうとした俺を、ルキアの疲れた声が制止した。





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