嫉妬心(葉サイド)
おいらの嫁さんは、かなりもてる。 昼に、放課後に、廊下へ屋上へ、体育館裏へと、しょっちゅう呼び出しをされては、 いつもさらりとした表情でおいらのもとへと帰って来る。 結果なんて、目に見えて分かってはいるけれども。 「ちゃんと、断ってきたから」 と、何時も通りの表情で、そうちゃんと、おいらに報告して下さる嫁さんに、 「相変わらず、アンナは大変そうだな〜」 等と、おいらはゆるく応えを返しはするけれども。 実は内心、嫉妬でいっぱいだったりする、おいらの心。 いっその事、大声で、 ――アンナはおいらのモンだ!! て叫びたくもなる。 それは授業中に見る、白昼夢にだったり、屋上に上がって、 校庭なんかを見下ろしてる時だったり……。 果ては、仲間に対してまで、嫉妬してしまう時もある。 アンナが不敵に、蓮に微笑み返す時とか。 しょうも無い事を言った、ホロホロの相手をする時とか。 ……おいらが居ない時に、まん太と二人で居る時とか。 ――おいらの嫁さんを、大胆にも奪おうとしにやって来る、おいらによく似た あいつが、軽々しく触れて来る時とか……。 こうなって来ると、自分でも重症だな、と思いはするけれども。 こればっかりは、最初に惚れた弱みと言うべきか、どうしようも無くて。 おいらは一人、悶々とその時をやり過ごす。 (あ、ハオの時だけは、問答無用で追い返すけどな。) そして、改めて思い知らされる、嫁さんの魅力に。 何時も『恐妻』だ、『暴力女』だ、『おっかねぇ』だのと言ってるあいつらも、 実はこっそりと、おいらの嫁さんに惹かれていると言う事を。 ・ ・ ・ 一体、おいらの嫁さんは、何人の人を虜にすれば気が済むんだ? あの蓮でさえ、アンナがふと、何かの拍子に柔らかい表情を見せれば、 真っ赤になってしまって、その表情を隠す為に、そっぽを向いてるし。 ホロホロだって、何時も痛い目にあいながらも、アンナの気が引ける度に 後ろで喜んでるし。 う〜、どうしたもんか。 だけど、おいらは知ってるから。 アンナが本当に微笑み掛けてくれるんは、 この、おいらにだけだって、言う事を。 他のやつらとは、違う笑顔に、他の連中には絶対に見せない、 おいらにだけに見せてくれる、いろんな表情も。 だけど、それでも。 ――やっぱり、気に喰わんもんは、気に喰わん。 何事にも、執着心が無かったおいらが、初めて欲しいと願った許嫁。 こればっかりは、どうしても、譲る気は無いかんな。 ――誰にも、決して。 アンナは、物≠ナはないけど、だけど、それでも。 願わくば、おいらだけの宝(もの)≠ナあって欲しい。 おいらだけを、見て、ずっと傍に居て欲しい。 大切な、失う事なんか出来ない、おいらだけの――。 ・ ・ ・ |